施主のご夫婦は、30数年前にこの敷地の近くに土地と建物を購入され、70代後半になる現在まで、そこに住まわれていました。その家自体には大きな不具合があったわけではないのですが、奥様に日当りのや通風が良い家に住まわせたいという、ご主人の思いから、近くの南西角地の敷地を購入したところから、家作りが始まりました。
平屋?上の部分は部屋ではないの?
確かに。この建物の写真を見た方は、本当に平屋なのかな?といったことをよく言われます。
外から一見すると、二階建ての家に見えますよね。
かねてから、南側の光を取り入れた家に住むことを、熱望されていたご夫婦の思いを形にしていくと、このような建物になったのです。
二階に見えていたのは窓なんですね?
そうなんです、南に面して寝室と和室を設けているのですが、それによって、後ろ側に光を入れにくくなってしまうのです。
そういったことを解消するために、リビングやダイニング(写真)に吹き抜けをつくることで、上部の南側の窓から、日光が家の奥まで届くようになっているのです。
平屋ということで狭くないの?
狭いというより小さいといった方がいいかもしれませんね。
この前に住んでいた家は、使わない子供部屋の掃除が大変だった、ということもあり、必要最低限の大きさから設計をはじめました。
小さければ、建物のメンテナンスも容易になります。
もちろん建築費も抑えれますし、夜お手洗いに行くときの動線が短かったり、といいことが沢山あるのです。
部屋数は?
間取りは寝室と和室、そしてLDKといったシンプルな間取りになっています。
すべての居室に南面からの採光があり、庭に面しています。それらにより、通風と採光に優れた間取りとなっています。
収納はどうなってるの?
基本は壁面一体収納として、置き家具は使わないようにしています。
壁面一体収納のほうが、効率よく収納がしやすく、デザイン的にもすっきりとおさまるからです。
吹き抜けだと空調は?
暑さ対策としては、吹き抜け部分は、夏の日差しが家の中に入ってこないような仕組みになっています。寒さ対策で、吹き抜け部分には床暖房を入れいます。冬、天気の良い日は日差しが奥まで差し込み、暖かくなるでしょう。
吹き抜け部分も屋根が斜めになっているので、1.5階程度の容量で、それほど大きな吹き抜けではありません。
ほっこりする部屋はありますか?
中庭のある和室スペースは、ほっこりするのにお薦めですね。
植栽を楽しみながらお茶をしたり、南側の方で、ひなたぼっこしながら、もう一つの庭を楽しんだり、出来るのではないでしょうか。
お庭はどんな感じ?
すべての部屋に対して庭があります。庭は、住みながら使い方を考えてつくっていく方向で、土のままに残してあります。
2つある中庭は、「将来デッキスペースを作ってバーベキューをしようかな?」「どのような庭にしようかな?」といった具合。南側の庭も「庭だけだとメンテナンスできるか自信がないので、家庭菜園にしたいな~。」ということで、建物完成時には土のままにしてあります。
施主はどんな方?
敷地だけを見て、家を考えるのは大変難しいことです。
今回のお施主さんは、プランを描いたりするのが好きな方で、自分なりにプランを描いて敷地を購入されました。しかし、現実には敷地に壁面後退という規制があり、希望のプランは全く当てはまらないことが、購入後にわかるのです。
そのような局面で、大きく考え方を変えることができたことが、今回の家作りが上手く進んだところです。
あれもこれもではなく、必要なものを中心に希望にかなった家を考えることで、快適な平屋での生活が可能となり、結果として家作りが成功したように思います。
また、ご夫婦だけでなく、ご子息の励ましもあり、家作りがスムーズに進めることができた、と後日談でうかがっています。